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第二章 ブルーベリーモンスター
「なあ、いいかげん教えてくれよ。何か良いことあったのかよ?」
登校中、廊下で柿崎に訊ねられた。
「何で? 別に何もないけど」
「そうか? 今日の森須、にやにや笑ってて気色が悪いぜ」
「よく行くペットショップでさ、いつもむすっとしてる猫がいるんだけど、昨日はちょっとだけこっちを見た、みたいなことがあったんだよ」
「森須、お前さ、なんつうか地味ーな人生だな」
「あとは、久々に美味しいカレーを食べたなぁ」
僕がそう言うと、喜多村まで憐憫に満ちた笑みを浮かべた。だけど、僕にとっては余韻まで味わえるほど、昨日は楽しかったのだ。
「おはよう」
だが、今朝の入谷は沈痛な面持ちをしていた。
嵐が過ぎるのを待っている、というよりは、まるで嵐の後の荒れ果てた光景を見て、歯を食いしばっているようだ。ヘッドフォンをしているから聞こえなかったのだろうか、と思い、改めて挨拶をしようかと思ったが、黙って入谷の方から何か言ってくるのを待つことにした。アクションがあったのは、二時間目の授業中だった。机の上にすっとルーズリーフが一枚移動して来た。そこには、シャープペンで書かれた綺麗な文字が並んでいる。
『昨日、誰かが殺されたと思う』
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