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「あら、早かったわね。真一さんもお疲れさま。ありがとうね」
エプロンで手を拭きながら、台所から母が顔を出した。
あの時。
母がエンジンを掛けようとしたのに、なぜか買ったばかりのそれは、すぐに掛からなかった。
そうこうしている内に、真一さんが車の中に居た母に気付いて止めてくれたのだ。
『あなたは!あなたの大事な娘の花嫁姿を見ずに逝くのですか!?』
普段温厚な彼の荒げたその言葉で、漸く母は我に返ったのだという。
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