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 野ウサギの親子に出会ったときも、山鳥の群れを見かけたときも、猿の一家がやってきたときも、白い熊は気さくに声をかけるのですが、すると黒い熊が現れて必ず暴れるので、みんな逃げてしまいます。  山に住んでいる動物たちの誰もが黒い熊を恐れているため、そばにいる白い熊にも近づいてはくれません。  白い熊は残念で仕方がありませんでした。いつも邪魔をする黒い熊のことが嫌いです、大嫌いです。でも、兄弟なので離れることはできません。離れてもくれません。  そんなある日のこと、白い熊は、黒い熊が眠っている隙に巣穴を抜け出して、彼方に見える山を目指して走りました。  森を抜け、野を駆け、川を渡り、そしてようやく山を訪れて、獣道をのっしのっしと歩いていたところ、向こうに見える茂みがガサガサと音を立てました。立ち止まり、誰だろうとうかがうと、一頭の犬が姿を現しました。  白い熊は犬を見たのは初めてだったので、なんという生き物かわからずに驚きました。犬もまた白い熊の見上げるような大きさに驚いて吠え、唸り声を上げて威嚇をします。  自分を怖がらずに睨みつけてくる犬に戸惑う白い熊ですが、自分からは決して唸らず、吼えもせず、逃げることもなく、その場に座り込んでなるべく小さくなり、敵対する気が無いことを示します。     
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