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 すると、犬は危険じゃないと判断したのか、唸るのをやめました。警戒はまだしていて、しきりに鼻をひくひくさせて匂いを嗅ぎながら、恐る恐る近づいてきました。白い熊は決して動かず、犬の好きにさせます。  白い熊は、犬が警戒心を解いてくれるのを待つべく堪えます。そして願います、黒い熊が現れないことを。  犬は周りをゆっくりと動いて、ついにすぐそばまでやってきて、直に臭いを嗅ぐようになりました。手を伸ばせば触れられる位置に犬はいます。  黒い熊が寝ている今しかない。  白い熊はもう我慢できないと、口から大量のよだれを垂らしながら両手を伸ばし、犬を捕まえようとしました。犬は慌てて後ろへ飛び、そして逃げますが、白い熊は猛烈な勢いで追いかけ、そして追いつめて押さえつけて、そのよだれをしたたらせる大きな口をがっぱと開くと、犬の頭にかぶりつこうとしました。  ですがそのとき、黒い熊が現れました。危ういところで白い熊を制止し、犬を助けました。ですが、白い熊の力は凄まじくて、すぐに制止を振り切られてしまいました。そして執拗にも、逃げる犬を追いかけます。  白い熊は犬よりも速く走り、仕留めようとしますが、そのときです、獣道の奥から人間が現れました。それも猟師です、大きな銃を持っています。  黒い熊は逃げろと叫びました。銃が如何に恐ろしいものであるかを、嫌というほどに知っているのです。     
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