変人、大宮涼香

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変人、大宮涼香

 彼女に対して固定観念があるとするならば、それは間違いなく《変人》だ。  彼女――大宮涼香(おおみやすずか)はボクのクラスメートで、だからといって特に仲が良いわけでも、中学が一緒だったわけでもない。ならば何故よく知りもしない彼女のことを《変人》だと断言できるのか。それは、彼女の行動に起因する。  大宮涼香は、もう高校生だというのに《常識》というものに従わない。授業中でも板書を書き写すどころか教科書をめくる素振りすら見せず、かといって別のことをするわけでもなく頬杖をついて黒板を見つめるばかりだし、どんな時でも体操服を着ているし、空気に向かって語り掛けたりしている。ひとり言にしてはいやに楽しそうに。  それゆえ、彼女はクラスの中で孤立していた。だというのに、そんなことを少しも気にしたようすなく、その奇行とも呼べる行動を続ける彼女のことがボクにはとても理解できなかった。だからボクはある日、直截に訊いてみることにしたのだ。 「大宮さんはどうして空気と話してるんだい?」     
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