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突然目の前に立ってそう訊ねたボクを、彼女は大きな目をさらに大きくして見上げた。どうやら話しかけられたことがよほど意外だったらしい。ボクだって彼女がこんな奇行を、まるで義務のように毎日毎日続けていなければ、絶対に話しかけたりなんかしなかった。
彼女の見開かれた目と見つめ合ってどれほど経ったろう。もしかして、彼女独自のルール――たとえば話しかけられたりしてはいけないなんてもの――を破るようなことをしてしまっていて、彼女は動くことを封じられてしまったのだろうか。そんなバカげたことを考え始めたころ、ようやっと彼女の目が瞬きに動いた。
ぱちり。
しかして彼女はとびきり嬉しそうに笑った。
「どうしてそんなことを言うの?」
すぐに答えを、返せなかった。彼女の今まで見たことのない表情に驚いたせいか、それとも答えにくい返事をされたせいか、どきりと一瞬だけ高鳴った胸の鼓動だけではわからない。
「だって」
何かを嚥下するように喉を上下させてから、
「だって、君がそんなことをしていなければ、クラスから孤立することもなかったろう?」
「あら」
また、瞬き。
ぱちぱちぱちり、と今度は三度。彼女の首がこてりと傾ぐと、色素の薄く長いわたあめのような髪が彼女の耳元からパラリと落ちた。
「私、孤立していたの?」
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