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村田美香は、新しいマンションに引っ越すために荷造りをしていた。棚から高校時代のアルバムが出てきた。作業をストップして見ていると、懐かしい写真が並んでいて、その中の一枚に目を止める。高校の文化祭の時に出会った超イケメンの高校生。美香がたこ焼きを焼いている姿をじっと見ている。
「すみません、そのたこ焼き焦げてますよ」
慌てる美香。急いで失敗作を取り除く。
「それ買います。捨てないで」
「でも、売り物になりませんから、こちらを持っていって下さい」
「じゃあ、そちらも入れて下さい。一緒に買います」
「失敗作はサービスです」
休憩時間に入り、美香は、あちこち見ていると、休憩所でさっきのたこ焼きを買っていた高校生が食べていた。
「先ほどはたこ焼きを買って頂き、ありがとうございました」
「いや、お礼なんていいですよ、食べたかったからですから」
「どこの高校ですか?」
「私立平和学院です」
「えー、すごい、進学校じゃん!頭いいね」
「いや、僕はビリですよ! 遊んでばかりいるから」
そこに美香の親友、さおりがやってきた。
「美香、今休み時間なの? 何?彼氏いないってこんなイケメン彼氏いるじゃん!写真撮ってあげるね」
いきなりデジカメで写真を撮られてしまった。
それ以来、彼と会うことはなかった。美香は、高校を卒業し、大学に進学してその四年後に一流企業のOL として働いていた。貯金をしてマンションを買って一人暮らししようと決心していた。
ある程度、片付けが終わり、隣人への挨拶しようとチャイムを鳴らした。なんと出てきたのは、あのたこ焼きを買ってくれたイケメン高校生。すっかり大人になってたくましく成長していた。
「あれ以来どうしているか、気になっていました。たこ焼きを見るとあなたを思い出します」
「覚えていてくれて嬉しいです」
そして二人の恋は始まった。
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