三章  呼ぶ声と_1

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三章  呼ぶ声と_1

 朝、バイトに行くと言う小野を送り出して、合宿中の空いた時間に読もうと鞄に入れていた本を読んだ。丸一日寝ていたから眠くなかったし、することもない。小野が用意してくれたお粥が冷蔵庫にあるから、昼食も温めるだけだ。 「……有川先ぱい?」  ラックに放置されていた携帯電話が震える。着信を確認し、そろそろ充電しなければと思いながら通話ボタンを押す。 『おはよう、草町くん。具合はどう?』 「おはようございます。大分よくなりました」 『うん。受け答えもハッキリしてるね。昨日の昼にでも連絡が来るかなと思っていたんだけど、音沙汰なかったから気になってさ。ちなみにこっちは何事も無く京都観光と創作活動に励んでるよ』 『何ウソ言ってんすか!この惨状のドコが何事もないっ』 『電話してんだからちっとは大人しくしとけ!』  電話の向こうで文月君が叫び、副会長らしき怒鳴り声が響いた。有川先輩から報告はなかったが、恐らく創作活動と平行して百人一首の特訓もやっているんだろう。寒気がした。 「そちらはお変わりなさそうですね。すみません、きのうは一日ねてました」 『うん、元気ならいいよ。小野くんと喧嘩とかしてないだろうね?』     
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