22人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
三章 呼ぶ声と_1
朝、バイトに行くと言う小野を送り出して、合宿中の空いた時間に読もうと鞄に入れていた本を読んだ。丸一日寝ていたから眠くなかったし、することもない。小野が用意してくれたお粥が冷蔵庫にあるから、昼食も温めるだけだ。
「……有川先ぱい?」
ラックに放置されていた携帯電話が震える。着信を確認し、そろそろ充電しなければと思いながら通話ボタンを押す。
『おはよう、草町くん。具合はどう?』
「おはようございます。大分よくなりました」
『うん。受け答えもハッキリしてるね。昨日の昼にでも連絡が来るかなと思っていたんだけど、音沙汰なかったから気になってさ。ちなみにこっちは何事も無く京都観光と創作活動に励んでるよ』
『何ウソ言ってんすか!この惨状のドコが何事もないっ』
『電話してんだからちっとは大人しくしとけ!』
電話の向こうで文月君が叫び、副会長らしき怒鳴り声が響いた。有川先輩から報告はなかったが、恐らく創作活動と平行して百人一首の特訓もやっているんだろう。寒気がした。
「そちらはお変わりなさそうですね。すみません、きのうは一日ねてました」
『うん、元気ならいいよ。小野くんと喧嘩とかしてないだろうね?』
最初のコメントを投稿しよう!