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三章 呼ぶ声と_4
九月も半ばを過ぎた頃。十五夜に満月が見られるということで、風流なイベントにかこつけたあきづきによる歌会が催されることとなった。
和歌の真髄は当意即妙にあり、と尤もなことを言い出したのは有川先輩だ。会員は元々歌人ではないからとたっぷり考える時間が与えられていたのだが、即興での歌合わせも面白かろうと開催が決まり、告知されたのは昨日だ。考える時間を与えないためだろう。
告知されてからというもの、随分前から企画自体はあったのだろう手際の良さだった。いつの間にか大学の屋上での活動許可をとっていたし、都心の団子屋に予約までしてあるという。
当日の集合時間三十分前に会場に着くと、そこには畳が六畳敷かれて和食寄りの軽食と飲み物の支度がしてあった。
「あれ、早かったね」
「有川先輩。お疲れ様です」
「うん。お疲れ様。お団子受け取ってきたよ。色々種類があるからたくさんお食べ」
「はあ……」
ちょうど今着いたらしい有川先輩が団子の包みを掲げる。その向こうから、階段を登って来ているらしいあきづきの会員の話し声が聞こえた。本来の集合時間になると、メンバーも集まり歌会の準備も整った。
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