序、回想

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序、回想

 一つのやり取りから始まる一連の出来事が毎夜、欠かされることなく夢に出る。 「あの空に味方はいないぞ」 「この国を守れるのであれば些末事です」 「すまんな。お前にこんなことを頼まなければならない自分が情けない」 「いえ、それはお互いの職務です。気になさらないでください」  その時は死を覚悟しての出撃だった。成功と失敗の確率は限りなく失敗が百に近かったのだ。  大空を舞う自分の前には空に浮く巨大な航空城塞。小さな島が丸々浮いていると思えるほどの大きさ、そして外壁は人工的に石と鉄で作られている。それはその名の通り空に浮く城塞で、空中に置いて未だ無敗を誇る世界最強クラスの制空兵器。故に世界の各国でこの航空城塞を持つ国は限られており、さらにその航空城塞を持つ国同士の戦争は禁忌とされている。それほど恐ろしい兵器に今から自分が攻撃を仕掛けようとしている。誰がどう見てもその姿はただの自殺志願者だ。     
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