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理由を考えたが今一よくわからない夜道は素直に響の言い分を受け入れ名前呼びを承諾。拳を握って小さくガッツポーズを取る響の行動に関しては全くわからないので首を傾げるしかなかった。
「だ、だったらお前もあたしのこと名前呼びでいいからな!ていうか呼べ響って!」
「強制かよ……わかったわかった、そのうちな」
「今呼べ。ここで」
「い、意味わかんねえ。………、高鳴」
「あ゙?聞いてなかったのか夜道、あたしなんて言った?」
「…………いや、すげー恥ずかしいしむず痒い。やっぱ名前呼び無しにしてくれ」
「却下だ夜道」
「ぐぬっ…!」
よく考えたら自分のことを名前で呼ぶ同年代の女子に出会ったことがない思春期純情魔術師の鈴重夜道にはかなりレアケースで、皮膚の内側に何かが這いずるような気色悪い感覚に襲われてしまうのだった。
「そのうち慣れるさ。な?よーみちっ」
「……お前、わざと呼んでんだろ…」
「なんのことだ??」
あからさまな顔をする響には舌打ちするしか抵抗出来なかった夜道。彼らは自分の教室へ戻るべく歩き出した。
「なぁ夜道」
「ンだよしつけえな…」
「―――これからもよろしくな」
太陽に照らされたその笑顔は、きっと太陽のせいで煌めいていたのだろう。
そう思って、でも目を逸らさず、彼女にフッと笑い返す。
「こちらこそ」
秘められた奇怪な力を操り、果てなき頂を目指す者。人は彼らを魔術師と呼んだ。
悪魔を従える少年。
死者を甦らせる少女。
人生で限られた青春という時間の中で、彼と彼女の波瀾尽くしな物語は進んでいく―――。
― 終 ―
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