ドワノフ・スワマン

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「まあ会ってみれば分かるだろう。くれぐれも気に食わんからといって妙な気を起こさんようにな」 含みを持たせた笑いのまま車で去っていくヴァスル、アレクセイにはそれが少々不穏なものに感じられた。 183年11月22日 AM6:00 『6時になりました。イルクテージと隣国のニュースを家庭に、ドルフズク日報の時間です』 朝、俺の日課はこのラジオを聴くことから始まる。たとえそれがオーブン付きの暖炉でよく温められた我が家から、隙間風で芯まで凍えてくる国営アパートのボロ部屋に変わっていてもだ。上官の指令はすなわちイルクテージからの指令。俺の能力を理解してここに置いたと言われれば断る理由などなかった。 『レブネフ政府の執念の追跡の末、二人目の銀貨泥棒が捕まり、残りの一人も顔写真付きで国際手配されました。 先月発生した美術品泥棒は、イルクテージ国境で捕らえられて以降大きな進展がありませんでしたがレブネフ政府が市場に流れるドネフ銀貨を発見したことで今回の犯人逮捕につながったと見られています。 レブネフ政府は残る一人の犯人の手配書を周辺国に送り、警戒を呼びかける姿勢です』 銀貨泥棒か……検問の経験は今までなかったが、ジェームズ検問官との研修で大体の要領はわかった。手配書もあるなら問題なく業務に当たれるだろう。     
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