あきらかに前振りなやつ

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あきらかに前振りなやつ

「兄貴、昨日買った漫画知らね?」 「あ、借りた。友達に貸したわ」 「まだ読んで無いのに」 「わりぃわりぃ。そのうち帰ってくっから」 またか。兄貴とは何にでも大体こんなもんである。 弟のものは俺のもの。 「にいちゃん、あれどーなった。イベ鯖重じゃ無い時間に手空いてるっていったじゃん。してくれたかー?」 「あー、鯖落ちメンテ突入」 「マジか」 「なのでオフでジョブマスカンスト」 「ま、じ、か。さすが暇人!」 暇じゃない。何かと文句が数倍になるから対策しただけだ。 甘やかされた未の弟とは。我が強い場合は兄貴だろうと使い倒すもの。 上と下に挟まれる兄弟の真ん中は微妙な立ち位置だと思う。多分気が小さい俺の場合に限る。 兄貴と弟に振り回され育ち、波風立てないよう大人しくする癖がついた。 気が小さいからな。 家でも外でも同じにしてる。だって振り回されると疲れるだろ。 「お前らなに、子分とか舎弟なわけ?」 「え。友達だけど」 「あははは、後ろからついてくからな。犬だ犬」 「忠犬だったのか」 「わははは!」 中高一緒だから仲良くしてんだけど。友達といても常に一歩引いてるからか、周りは俺を犬という。まあ、大人しい駄犬程度が目立たなくていいと思う。 「え、あんた邪魔」 「ちょ、こんな日まで二人で帰んの?バカじゃない?」 今日はバレンタイン。リアイベする日だ。 彼女いない友達と帰宅中女子に割り込みされる。 彼女が今いないだけでモテる友達に、チョコ渡しに来たんだろな。 これも二歩くらい下がっておかないと、何かとトバッチリが飛んで来そうだ。 「これあげるー!」 「貰ってっ」 「えっ、私からも!」 まあ本当モテること。 「忠犬そこどいて」 「邪魔~」 「お前邪魔~」 ・・・煩いな。ハイハイ撤退しますよ。扱いがぞんざい過ぎるだろ。俺には義理のひとつもないのか。 どんっ 「 あ、」 きゃーっっ!! ここは駅のホームだった。 俺は誰かに体当たりしたのかされたのか、線路に背面ダイブした。
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