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「カナタと居られればそれだけで幸せだ。身体の欲求も否定は出来ないが、今はカナタの身体が一番大事だ。そして俺たちの子どもも」
シイバはカナタを膝から下ろすと向き合うようにして寝ころんだ。額を合わせるようにして寄り添うと小さくキスをする。
「俺はこれ以上ないほどに幸せだ」
「僕も……」
オメガの男性はマタニティブルーに要注意と、妊娠初期から指導されていた。けれど、カナタは不安に駆られるようなことは少しもなかった。それは常にシイバが寄り添い、カナタと同じくらい妊娠や子どものことを考えていてくれたからだ。
ふたりでいられる時は残り少ない。新しい家族が生まれてくるまでのあと少しの時間も十分に楽しみたい。
「シイバさん、だっこ……」
「ん」
ゆっくりと身体を反転させたカナタを、シイバが後ろから抱きこむ。体型を変えたカナタが一番密着度を上げられる体勢はそれだった。背中にドクドクと力強く打ち付けるシイバの心臓。それからカナタのお腹をぼこぼこと蹴飛ばす新しい命。その両方に包まれてたまらなく幸せだった。
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