6.

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「……でも、嵯峨野課長が異動確定なら、そうも言ってられませんよ」 「だよなぁ」  音羽と嵯峨野が頭を突き合わせて悩んでいると、江波がポツリと呟いた。 「……できれば兵頭がいいと思います」  珍しく自分の意見を言った江波に、二人は驚いたように顔を向けた。  客先ではきちんと主張もするが、課内に戻ると寡黙であまり話をするタイプでもなく、会議でも、滅多に意見を言わない江波。 「その根拠は」  嵯峨野が訝し気に聞く。 「……彼は三年目ですし、そろそろ異動してもいい年数かと。それに池田さんももう一人立ちできるでしょう」 「それだけか?」 「……αでも、彼は私にあまり興味を示しておりませんので」  そう言いながら、江波は密かに思っていた。  同じ課になったら、もしかしたら少しは違うかもしれない。  この時には、自分の中に兵頭を渇望している想いがあることを自覚し始めていた。
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