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 吉澤の後任が決まる前に、嵯峨野が転勤になるかもしれない、という話が持ち上がった。  新人が一人配属になることで、それでなんとかしろ、というのが上層部の考えだった。 「新人じゃ、キツイだろ」  新人の三枝の履歴書と、社内での適正検査の結果を見ながら嵯峨野がぼやく。  典型的なα至上主義で、フリーのαでは、Ωの江波のほうが危険ですらある。  課内の雰囲気も悪くしかねない。 「まぁ、一応、研修期間がありますから、それを見てからでもいいんじゃないですか」  書類を手渡されたリーダーの音羽は、じっくりとそれを見ながら答える。 「まぁなぁ……同じαなら、二課の兵頭と池田もいるが。井浦がなぁ……」  二課の課長の井浦は、この二人を買っている。  このどちらかと新人を交換というのは、いい顔をしないかもしれない。
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