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1章 砂と太陽と
見渡す限り、砂、砂、砂。うんざりするほどの砂の海である。
黄土色以外のものは残念ながら見当たらない。曇っていれば空でも眺められただろうが、際限なく照りつける太陽のせいで、目を開けるのも億劫だ。まさに灼熱地獄。
ときおり吹き付ける風でできた縞模様の砂の上を、ラクダに跨(またが)りのっそり進む。湖や川は勿論のこと、草いっぽんだって生えてない。数時間に一度、神の気まぐれのように存在する小さな林は、人が涼めるほどの背丈をもっていない。
「ユエル、ティンディア国はまだか」
茹だった体をなんとか反らせて、隣のラクダに乗っている僧侶に尋ねる。
彼はこの暑い中でも法衣(ほうい)を纏(まと)っていた。赤紫や砂漠色の重そうな布に包(くる)まっているコイツが、神の教えとやらに忠実で、クソ真面目な性格だというのは知っているが、この状況下でも一貫していることが正気の沙汰とは思えなかった。頭がイカれちまってるんじゃなかろうか。
「陛下、我々がフスラ国の王都を出たのは今朝方です。自国へ帰るには二晩かかるとお話しましたのを、もうお忘れですか」
僧侶はこちらを見もせず澄ました顔ですらすらと答えた。
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