40

4/6
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
彼の何がそんなにいいんだ。幸太は不思議だった。自分は2年と少しこの高校にいるというのに、まともに話すのは夏菜子とゆま、金木くらいなのだから。 帰り道も幸太は悶々としていた。その事を夏菜子に言い出せない自分にもさらに腹が立っていた。幸太は家が実家に戻ってからも、夏菜子とは帰ると決めていた。彼女を家の前まで送って帰るのだ。防犯と彼女には言ったが、やはり樹が嫌で片時も彼女と離れたくなかった。 「(俺だって話そうと思えば話せる!ただちょっとブランクがあって話し方をど忘れしただけ!)」 夏菜子は文化委員は荷が重いが、書記になりたいと言った。クラスでやる出し物を相当楽しみにしているらしい。幸太も見る分には楽しいから好きだった。シルク・〇・ソレイユとか劇団〇季だとか、宝〇だって好きだった。幸太は自分でも分からなかったが鼻息を荒くした。しかし自分が人前に出るのは、どうも想像がつかなかった。 「どんなことするのかな」 「劇、なんじゃない、かな」 「私、おとぎ話系ならお姫様やってみたいなー!ドレス着てみたい!」 夏菜子は1人空想が広がりウキウキしていた。幸太は彼女のドレス姿を想像して鼻の下がのびた。 「体育祭終わったら、本格的に準備するって言ってたね!やっぱり劇とか難易度高いやつかな?」 夏菜子の夢は膨らんでいた。幸太はどうすればさりげなく裏方に回れるか、そればかり考えていた。 翌日の委員は、文化委員が男女1人ずつ決まり、夏菜子は書記をつとめることになった。その日、彼女はとくに機嫌がよく、口を開けば文化祭の話ばかりしていた。 金木とゆまは体育委員にお互いなったらしかった。幸太は、お互い違うクラスでも同じ委員なら一緒にいられるもんな、と思った。2人は良好に続いているのだと分かり安心した。 「幸太んとこは出し物やるんだ。俺んとこは何もしないっぽい」 「私のところも。かなちゃんのクラス、アクティブだね」 ゆまが嬉しそうに話す夏菜子を見て言った。 「嫌がってる人もいるけど、でもやったら絶対楽しいってなると思う!」 幸太は「嫌がってる人」の1人だったが、夏菜子のお姫様は見たかった。 「もう体育祭なんて考えらんないよー。文化祭楽しみすぎて!」 適当にやっちゃえばいいよ!とゆまが笑い、そうだねといいながら夏菜子もくすくす笑った。
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!