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「(俺は本気出してもリレーで1位になれないのに、適当にしたら…悲惨)」 幸太は黙っていたが、頭の中は目まぐるしく女子2人の右往左往する話題に必死について行っていた。 「曽根くんは今年もスウェーデンのアンカー?」 ゆまが面白がって幸太を見る。幸太は不機嫌な顔をして首を思い切り横に振る。 「でもさ、大体スウェーデンって押し付け合いだから去年と同じ人な気がする」 ゆまがニヤニヤする。金木もゆまの後から頭だけを出してニヤニヤと笑っている。 「頑張ってーん!幸太くぅん!」 金木が裏声で、去年の夏菜子の応援を真似する。真似をされた本人は照れるどころか、似ていないと大笑いする。 「よぉし!愛する入江さんにいいところ見せちゃうぞー!」 次に金木は顔の向きを変えて、幸太の心の声を真似した。幸太は金木の首を腕でギリギリと締めてやった。 「き、筋肉に殺され…るぅ…」 金木は気絶する振りをして白目をむいた。女性陣は大笑いをしてその様子を見ている。幸太はコツコツと頑張って作り上げた筋肉がこんなところで役に立つとは、と自身の腕を見ながら感心した。 「何楽しそうに話しとん?」 樹の声がするほうを、幸太は見た。彼は夏菜子の後におり、彼女の両肩に手を乗せて顔だけを出していた。 「ちょ、触らないで」 夏菜子が怪訝そうな顔をする。 「えー?いいやん!仲仔(仲良し)やん」 幸太はモヤモヤして、机を思い切り拳で殴った。鈍く大きな音と共に、教室が一瞬静まり返る。 「別に怒らんでええやん、ごめんて」 幸太は思い切り人生で1番の鬼の顔で樹を睨みつけた。 「あー、怖っ。モテない男は器も小さいわー」 樹はわざとらしく彼を挑発するようなことを言って、自分の席に戻っていった。 「気にしちゃダメだよ、曽根くん」 夏菜子が小さな声で耳打ちする。彼女の息がかかる耳が熱くなっていく。幸太は顔と耳を真っ赤にしながら深く頷いた。その様子を、ゆまと金木はニヤニヤしながら眺めていた。 帰り道に、唐突に夏菜子が幸太の家に行きたいと言い出した。
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