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翌朝。彼が起きてくる前にコーヒーを淹れ、淹れた後でミルクも牛乳も切らしていることを思い出した。
『ちゃんとお付き合いができる人を探している』
……ということは、こっぴどい目に遭わされた過去でもあるんだろうか。それとも……。
俺は彼にとってちゃんとお付き合いできる人間か、それとも一晩限りの相手なのか、それは彼が決めることだ。……けどなぁ。28にもなっていつまでも受け身なのもどうなんですか、と胸の内で自分をつついてみる。
リビングのドアがぎぃときしみ、昨夜貸した俺のTシャツにアンダーウェアだけの恰好をした彼が、小さなテーブルの向かい側に座った。
「コーヒーはブラックでも平気?」
俺の言葉に微笑んで頷いた彼の前に、濃紺のマグカップを置いた。湯気の立ったマグに唇をつけ一口飲むと、おいし、と小さくつぶやいた。両手でカップを持ってコーヒーを飲む男性を見たのは、初めてだ。
「僕、これまで1人の人と長くお付き合いしたことがなくて」
「長く、ってどれぐらい?」
「3か月も続けば」
「ははっ。俺、3か月だったら3回ぐらいしか会えないうちに終わっちゃうな」
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