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「1人でいるのは寂しいくせに、あまりにも近い距離に他人がいることにいつまでも慣れなくて、いつも自分から離れちゃう。それでまた寂しくなって……」 「また来ればいいんじゃない? ここでもいいし、昨夜の店でもいいし。俺、そういう話を聞くのは、結構得意だから」  俺が話している間、小さく「あ」という形で開いたままだった唇をきゅっと結んで、テーブルに置いたマグカップに彼が視線を落とした。……と思ったら、ぱぁっと赤みがさした顔を上げ、 「今日、髪を切りに行くんですか?」 「え? えぇ? 何それ」 「昨夜、マスターとそう話してたから」  ……あぁ。  店に顔を出したのが久しぶりだったせいか、俺がカウンターに座った途端に、「髪が伸びすぎ」とか、「主任になったんだからちゃんとしなさい」とか、マスターにいきなりオカンが憑依して。「ハイハイ」とあしらっても止めないものだから、「明日切りに行くから!」とムキになって答えたんだ。聞いていたのか、君はそれを。 「僕、たぶん最初にあの店で土屋さんを見た時から、ちょっと気になっていて」 「髪型が?」 「違いますよ」     
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