遅刻した

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 その日おいらは寝坊して、急いで学校に登校した__  前の晩、深夜番組(エッチ系)にはまったのがいけなかった。遅刻なんてしようものなら、学年主任のジャイアンに怒られる。  校舎下駄箱スペースに人影はない。時計の針は一時限目五分前を差している。なんとか遅刻は免れそうだ。  おいらのクラスは二年Aクラス、階段をあがった先にある。 「はぎゃ!」  だけど階段の手すりに手をかけたとき、なにかにぶつかって吹き飛ばされた。 「えっ? ここは小学校?」  ぶつかったのはおいらより小さな少年。背中にはランドセルを背負っている、明らかに小学生だ。 「ゴメンね。おいら、間違って別なガッコーに来ちゃったね」  どうやらおいらは、寝ぼけたあまりに隣にある小学校に迷い混んだようだ。愛想笑いを浮かべて頭を掻いた。 「くぅー、そんなんですませるの?」  その時だ、その声が聞こえたのは。 「えっ?」 「人にぶつかって おいて、そんなワビの入れ方で済むのか、って言ったんだよ」  それは同じ高校のブレザーを着込む一年生。その後方には同じ一年生二人を従えている。 「……間違った訳じゃない」  おいらは思考をフル回転させた。教室の位置や階段の作りは、明らかに高校のものだ。廊下の隅には煙草の吸い殻が無造作に投げ捨ててある。つまり場違いな来訪者は小学生の方。  そんな風に呆然と辺りを窺うおいらを一年生は『馬鹿じゃねぇ?』とばかりに首を傾げて見ている。二年生であるおいらに対して、少しも尊敬の念は感じられない。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!