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 週末前の金曜日のことだ。高校での授業が終わってそれぞれの部活動を終えて、それから時間をおれたちは過ごす。  決まってこの時間、おれは理久の部屋に遊びに来ていた。  小守理久(こもり りく)。それがおれの大好きな理久の本名だ。  理久は同じ歳でクラスメイトだ。高校一年のときに知り合って以来、つるむようになって三年目になる。  一緒にいて何をするわけでもない。ただ傍で過ごしたいだけ。そんな空間が好きで、双方がそう思っているから、よくこうしてここで過ごしている。  いつものよう理久は自身の寝室も兼ねているこの部屋でテレビゲームに熱中していた。ヘッドホンを装着してマイクをつけて、おれじゃない別の友人と通信をしている。  床に座っている理久の背中に自分の背中をくっつけて、反対向きに座っておれはスケッチをしていた。描くのが好きでスケッチブックはいつでも手放せない。気がつけば鉛筆を握って絵を描いている。 それが落ち着くスタイルで、今もこの手は止まらない。今日もすでに何枚も描いていた。  絵の中身の対象はいつも同じで、呆れるほどに理久の顔をスケッチしている。今では本人を見ながらじゃなくても描けるレベルに達していた。  手を動かしながら、ふと思い出し、おれは理久に話しかける。
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