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 時刻は朝の十一時を過ぎている。すでに陽は高い位置にある。その日差しをやけに眩しいと感じるのは、満足がいくほどの睡眠時間を昨晩はとれなかったからなのかもしれない。  眠そうに何度も欠伸をして、白い箱を包むビニール袋を左手に下げて、僕は自宅へ足を急がせていた。  ふう、と一つ息をつく。 「結局何も用意ができなかったからな。せめてこれだけでも、と買うつもりだったけど」  僕が手にしているのはケーキ屋の箱だ。つい先ほど自宅から一番近い場所にあるケーキ屋で購入をしてきたばかりのものだ。  ―自業自得かもしれないが。それにしても。なかなか寝つかないのには困った。そういえばアレが熟睡をしている姿なんて、見たことがあったかどうか。記憶にないな。  眠った様子の恋人、奥永砂生(おくなが さお)のことを思い返して肩をすくめる。  現在、砂生は僕の部屋で就寝している。寝ていることを確認してから自宅を出たから、それは間違いがない。  昨晩の砂生とのやり取りを思い出す。いつもと変わることのないやり取りだったのだが。  少し違ったのは、普段よりも若干僕が砂生に歩み寄ったことだろうか。
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