【六月】

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夏休みは真歩は毎年横浜にいない、裕子以外の者は、祖父と父の元へ行くとしか聞かされていない。 実際には横浜に来る直前にまで住んでいた京都と、京都へ来る前に住んでいたイギリスへ行っている。 京都には祖父が住み、イギリスは真歩にとっては生まれ故郷であり、父が未だに住んでいる。だがイギリス生まれである事は、真歩は誰にも明かしていない、面倒で不必要だと思っていたからだ。 夏休みの間は横浜にいない真歩とならば、休み前に何かあったのだろうが、結局夏休みが明けても誰も気付かなかったのだ。それを多香子が無理矢理な形で──尾行して暴いたのだ。 それはそれで、男子達は知りたくない事実だった。 何故なら、バレてからと言うもの、真歩は隠すという事をしない、隙あらば裕子とのスキンシップを図る。 「見せつけてるつもりはないよな」 言いながら真歩は裕子の髪を指に絡ませる、裕子は怒ってその髪を取り返して無視をした。 そう、唯一の救いは、裕子の方はまだ恥ずかしさもあるのか、明らかに拒否をするところだ。 ざまーみろ、と思ってみるが、虚しいことこの上ない。
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