病める時も健やかなる時も愛を誓……うはず

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光風、心配で来たのかな。彼が立っていた場所には、今は王牙が立って、片手で俺の手を握ってくれている。 何時間もたったような気持ちの中、ギャアギャアと聞こえた二人目の声に、思わず口元が緩んで、王牙と見つめ合った。王牙もふにゃり、とした顔。変な顔だ。 「アタル様、可愛い男の子です、」 「あは、死ぬかと思った、」 「皆無事だよ、アタル、良かった…、本当に、」 「また、…泣くなよ、パパになるんだろ」 「ダメ、パピィとマミィって呼ばせるんだから」 「……勘弁してくれよ、」 子供の顔を見て思わず笑みが広がる。黄金さんが抱く男の子と、王牙が抱く女の子。小さくて、まだまだどっちがどっちなのか解らないけど。産まれてきてくれて感謝しかない。 「竜の祝福を彼らに。幸多からんことを」 黄金さんがそう言って、二人にキラキラとした光を注ぐ。そしたら二人して小さな手を開いたり閉じたりするもんだから、思わず笑ったのだった。 それから、興奮冷めやらぬ中、王牙に運ばれて手早く着替えさせられて。あれよこれよと何もしなくても王牙が何でもする中、広いベッドに寝かされる。 紅豪にお風呂は禁止、とか体力使う事は禁止、とか諸々注意点を言われて今に至る。 隣に王牙が寝そべって、額にキスをくれる。抱き締められて、王牙の腕の中、酷く安心した。 「頑張ったねアタル」 「……うん、そうだ、名前どうする?」 「えぇとね、」 「ジュエリーボックスは無しな」 「わ、解ってるよぉ……うーん」 その日、魔界の空はオーロラと沢山の流星が降ったという。魔王の妃が無事に双子を出産したとあって街中は活気付いて、お祭り騒ぎだったらしい。その妃が人間の美しい青年だと悪魔の人々は驚きながらも今更人間差別なんて時代じゃないね、なんて話も口々から漏れていた程だ。 暫くは城内から赤ん坊の泣き叫ぶ声が響いて使用人の慌てる姿がそこかしこで見られている。紅豪は沢山のベビー用品を担ぎながら妖精で二人をあやして毎日忙しそうだ。王牙が二人を腕に抱き上げると、担ぎ上げる悪魔と天使みたいに笑う二人のギャップにベッドで静養しながら萌えが溢れて仕方がない。 黄金さんと漆史は、見るからに静かに愛を育んでいるみたいだ。二人の子供を見る日も、もしかしたら近いかもしれない。
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