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『やめて! 離してっ!!』
『いいから来い!!』
駅まではあと少しだった。
驚くほど静まり返っている夜の田舎町に切迫した男女の声が響く。
消えかけの街灯。音もなく降り注ぐ粉雪。木枯らしが煽る冬の虚しさ。
黒光りの高級車が照らすヘッドライトの前で、旅行バッグを持った女の腕をスーツ姿の男が無理やり引いていく。
必死に抵抗する女だが、開きっぱなしのドアの前まで連れられ、
『大きな声を出すなっ! ホラ早く乗れ!』
と後部座席に押し込まれてしまう。
落ちている旅行カバンも車内に投げ入れ、力ごなしにドアを閉じた。
辺りを気にするように見回しながらすぐ車に乗り込み、そのまま発車。
車のタイヤ痕が夜の闇へと伸びて消えていく。
数秒前まで言い争っていたその場は一瞬にして静寂に包まれた。
薄く積もった雪に残っているのは方向の定まらない足跡と、三日月のネックレス。
チカチカと不安定だった街灯は遂に力尽き、その光を失った。
『......』
数分後、若い長身の男がやってき、キラリと光るネックレスを拾う。
積もった雪でさっきの足跡は既に消えていた。
『......紗月』
そう呟いた男の首にも、三日月のネックレスが巻かれていた。
バタンッ!!
そこで1巻が終了。私は漫画を閉じた。
「あああ、切ない」
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