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「美味し。私、ペスカトーレ好き。あ、でも今度はボンゴレが食べたいな」
ちゃんとパスタのお店に連れて来てくれる。
「勝手に来いよ」
こっちを見てくれない小林君に少しの淋しさはあるけど、前みたいには怖くないから
「小林君が食べてるアラビアータって、怒ってるっていう意味なんだよ。ふふっ、小林君にぴったり」
「てめぇ…」
やっと目が合う。
「ほらね?」
「………」
でもね、他にもあるんだ。
熱狂的なとか…猛烈なって意味も。
「あっ!今日は私が出すね」
伝票を持って立ち上がると、私の手から伝票を取ってレジに向ってしまう。
「ねぇ!聞いてた?」
お財布を開けた時にはもうお釣りを受け取っていた。
後ろを追いかける。
隣に並ぶと
「もお、ホント私って小林君を追いかけてばっかりだよ」
「……」
「ねぇ、お金。私出すから金額教えて」
答えてくれない小林君にもう一度、同じ言葉を繰り返す。
「うるせーな」
「だって、いつも払ってもらってるし」
「金だけはもらってるからいらねー」
だけは…って言葉が私の中で痛いものに変わった。
だから私は
「ありがとう」
そう言って小林君を見上げて微笑んだ。
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