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部下たちもその執心を知っている。雰囲気に見合わず豪胆な面もあるミーシャのことを、多くの者が認めている。アレッサンドロに外に連れ出されたり、または彼の留守を預かっている時などにミーシャは部下の男たちと言葉を交わすが、大抵の男がそれでミーシャの魅力にやられるのだ。か細いかと思えば、他人の扱いに長けていたりする不思議な青年。アレッサンドロがそんな姿を愛すものだから、この不安はミーシャだけではなくファミリー全体に広がりつつあるもの。
揺れる車内で、ミーシャは大胆にアレッサンドロに跨った。
正面から首筋に縋りつき、甘えるように尻を彼の脚に擦り付ける。
「俺はあなたに愛されるためにここにいるんですよ。忘れないでくださいね」
「……ああ、お前を危険にさらすようなことはしない。お前が今までの女たちとあまりにも違うから、ついつい入れ込んでしまうんだ」
「違う?」
「決定的に。お前は私をボスと見ている」
アレッサンドロは据え膳を逃す男ではない。当然のようにミーシャの尻を揉み、服越しに胸へ唇を寄せる。緩い刺激にミーシャは嬉しそうに身を捩りながら、アレッサンドロの言葉にふっと笑った。
「そうかも。俺も男だから、あなたに心酔する人の気持ちが痛いほど分かります。それは、愛とは別の感情で」
「お前は人に勘違いをさせるのが病的に上手い。美しい愛人のはずが、誰よりも信頼の置ける部下に見える時がある。……だが、杞憂だ。お前をこんな物騒な世界に留め続けることはしないし、何より……」
「何より?」
「私は部下には手を出さない」
それから二人は目的地に着くまで、淫蕩な触れ合いに興じていた。
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