818人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
それをベッドに腰掛けた那音がぼんやりと見ていた。
「――今日、ルークに言われちゃった。昨夜、俺たちの声がうるさくて眠れなかったって」
「ん?来ていたのか?――自分のマンションがあるのにわざわざこの邸に来るアイツが悪い。自業自得だ」
「そうなんだけど……」
那音は綺麗にメイキングされたシーツの上に倒れこむようにして仰向けに寝そべった。
そんな彼に上から圧し掛かるようにしてレヴィが唇を重ねた。
「魔物が――しかも俺たちは夫婦だぞ?欲望のままに相手を求め、愛を確かめ合って何が悪い?ルークもいずれは分かるだろう?」
レヴィが欲情するたびに増していく甘い香りにいつしか那音も本来の姿に戻っていた。
妖艶なアメジストの瞳がレヴィを捕える。
「――今夜はゆっくり眠りたい」
レヴィのキスに応えながら那音は小さく囁いた。
ここのところ続いていた激しいセックスと、病院内でのハードワークで、少々疲れが溜まっていた。
魔物であれば多少の無理も通せるが、那音はまだバンパイアになって日が浅い。それ故に、レヴィと同じように体を酷使する事がツラい時もあった。
那音の予想外の申し出に一瞬驚いた表情を見せたレヴィだったが、彼に逆らうことはせず、ゆっくりと上体を起こした。
「――怒ったのか?」
「いや……。お前がそうしたいのであれば……」
以前の彼を知る者が見たら、卒倒レベルに値する事だろう。
自分の想い通りに世の中を動かしてきた彼は、相手の話を聞いて譲歩するということはあり得なかった。
那音と婚姻を結んでからのレヴィを見るノリスが何度目を見開いたことか。
それほどレヴィは変わった。
ヤル気満々であったであろうレヴィは少し寂し気に目を伏せてベッドに腰掛けた。その姿を見た那音は綺麗な唇を綻ばせ、まるで天使のような笑みを見せた。
ただ一つ天使と違うのは唇の端に見え隠れする鋭い牙ぐらいだろう。
「レヴィ、喉がかわいた……」
赤い舌を誘うようにちらりとのぞかせた那音は、後ろからレヴィの首に両腕を絡ませる。
最初のコメントを投稿しよう!