ベストタイミング

　飼い猫の姿が見えないので名前を呼んだら、天井裏から鳴き声がした。
　どこから潜り込んだのか、天井裏に入り込んでしまったらしい。
　押入れの天袋を開け、さて上に助けに行ってやろうかと思った瞬間、別場所から聞き慣れた鳴き声がした。
　上にいる筈ではと思いながら名前を呼ぶと、今までどこにいたのか、戸口からヒョコヒョコと部屋に入って来て、押し入れ下に置いた椅子の脚にまとわりつく。
　どこからどう見てもうちの猫だ。じゃあ上にいる奴は何だろう。
　よその猫がどこかから迷い込んだのか？　それはそれで外へ出した方がいいけれど、結構鳴いているから、天袋から身を乗り出した瞬間、興奮した猫に攻撃される危険性もある。
　よそから迷い込んだのなら、そのうち同じところから出ていくかもしれないし、さてどうしよう。
　迷う頭上で鳴き声が病み、耳にはっきりと、猫ではありえない大きな舌打ちが響いた。
　しばらく固まっていたら、何かが這うような音が遠ざかり、それきり舌打ちも猫の鳴き声も聞こえなくなった。
　どうやら天井裏を覗かなくて正解だったようだ。
　いいタイミンクで部屋に現れてくれてありがとう。お前は本当に利口で可愛い最高の猫だよ。

ベストタイミング…完