第一章「アイドルだって強くなくっちゃ」

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第一章「アイドルだって強くなくっちゃ」

木造の壁で周囲を覆われた舞台に、二人は立っていた。一人はまだ年端も行かないような少女だったが鍛え抜かれた体には一切の無駄な肉がついておらず、女性としての魅力と機能美を併せ持っている。耳は狐のように長く毛で覆われていて、その目も狐を思わせるように切れ長なものだった。尾底骨辺りから生えている尻尾は微かに震えていた。少女と対峙するもう一人は、穏やかな笑みを浮かべていた。赤銅色の筋骨隆々とした身体は、豊満な胸と合わさり女性としての色香は全く損なわれていない。意志の強さが読み取れる大きな瞳と額から生えている小さな突起物のような角が、大柄な作りの顔と身体に妙な愛嬌を持たせていた。見た目だけでは少女と言うには憚れるかもしれないが、年齢的にはもう一人の少女とは大差は無い。生獣種と鬼種には、それだけ生まれ持った外見に差があった。だが、共通点はある。どちらとも標準の美的感覚でいえば上位に入るということだった。 壁の上に拵えられた観客席の埋まり具合と嬌声がそれを物語っていた。 。 「お互いまだ顔見世、いや、もうデビューって言うのかな。まだ間もないでしょ」     
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