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 ぼくはカカシ。  でもね、実は魔物なんだ。  魔王様に作られた。  もうずっと前のことさ。  人間を殺すのが、ぼくの使命。  でも、嫌なんだ。  そんな恐ろしいことはしたくない。  だって、人間は優しいんだ。  道に捨てられていたぼくを拾ってくれた。  手入れをしてくれて、  新しい服を着せてくれて、  見晴らしの良い畑に立ててくれた。  カカシとして使ってくれたんだ。  赤いマフラーと麦わら帽子は、ぼくのお気に入りさ。  みんな、良い人たちなんだ。  だから、ぼくは殺さない。  友達になりたいんだ。  でもね、ダメだったよ。  勇気を出して話しかけてみたんだ。  おはよう!  するとね、怖がられた。  魔物だと叫ばれて、逃げられた。  すぐに大勢の人たちがやってきたよ。  みんな、すごく怖い顔をしていた。  ぼくを畑から引き抜き、燃やそうとした。  やめて!  そう叫んだけど、やめてくれなかった。  ぼくは燃やされたくなかった。  死にたくなかった。  だから、呪文を唱えた。  唱えてはいけない呪文を。  イナゴの大群がやってきた。  悪魔のイナゴ。  みんなを襲い、村を飲み込んだ。  世界が真っ暗になった。  真っ暗闇さ。  気づけば、誰もいなかった。  ぼくだけだった。  また、ひとり。  また、ひとりぼっち……。  ぼくは人間が好きなんだ。  人間と友達になりたいんだ。  だから、ぼくは旅に出ることにした。  友達になってくれる人間を探す旅さ。  世界のどこかに、きっといる。  いるはず。  そう信じて、また旅に出る。 【完】
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