改札の外の女の子

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改札の外の女の子

 電車通勤をしているのだが、帰宅時、いつからか改札の外に小さな女の子が立っているようになった。  俺の仕事が残業のほぼない職種なので、寄り道しなければ必ず女の子を見ることができる。  まだ幼稚園くらいかな。いつも赤色のワンピースを着ていて、じっと駅の構内を見ている。  多分、父親か母親を待っているのだろう。  おとなしく、ただ親の帰りを待っているらしき女の子。その姿になんとなく気持ちが和んで、帰りがけ、なんとなく、今日はいるのかと確認する癖がついた。  そんなある日、野暮用でいつもより少しだけ帰る時間が遅くなった。それでも反射的に改札向こうを見てしまったが、もう女の子の姿はない。  親を出迎えて帰ったのだろう。そう思い自宅への道を進むと、数メートル先に見慣れた赤いワンピース姿が見えた。  顔は見えないが、服装は間違いなく、改札の外にいつもいるあの女の子だ。でも、駅には親を迎えに来ているだろうに周りに人の姿がない。  遅くなるからと連絡が入り、一人で帰る途中だろうか。でも女の子は手ぶらで、誰かと連絡を取る手段などなさそうだ。  なんとなく気になってそちらを見ていたら、ふいに女の子が俺に向かって振り返った。視線が合うなり背を向けて、勢いよく走り出す。  その様子に、反射で後を追いかけると、女の子はいかにもオンボロという表現の似合う、近くのアパートの敷地内に駆け込んだ。そしてご丁寧に、俺が側まで寄るのを待って一つの部屋に入っていった。  勢いでここまで来てしまったが、駅の付近で見かけただけの女の子を追いかけてきて、家にまで入るなんてありえない。すでに今でさえ不審者寸前なのに、そんな真似をしたら犯罪もいいところだ。  でもさっきのあの子の様子が気になり、しばらくそのまま部屋を眺めていたら、案の定、近所の者だという人に声をかけられた。
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