第1章

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 家までの帰り道を歩く。下校時刻間際だからか体操服を着た部活生が多い。みんなが体操服姿でエナメルバックを持つ中、制服を着てリュックサックを背負った私はどこか浮いている。  普段であれば同じく放送部で当番だった人と帰っているから、浮いているとは感じたこともなかった。今日も本当は感じないはずだったんだけどな……。  あまり彼と当番が同じになることもなく、小学校高学年あたりから避けられ始め話すことができる機会もなかったからこの数少ない機会をとても楽しみにしていたのに……こんな気持ちになるとは昨日は想像もしていなかった。  どこで知り合いと会うのかわからないので、姿勢を正し、いつも通りを装って歩く。  ひたすらにまっすぐに道を見つめ続けながら歩いているといつのまにか知らない場所についていた。  かなりの距離を歩いていたようで、足の裏に鈍い痛みが走っている。空を見るともう空は水色から茜色に変わっていた。腕時計を見る。まだ門限まで時間はあるな。  どこかで休憩しようと思い、財布の中には何円ほど入っているか確かめた。そこには千円札が二枚。これだったらどこかのお店に入れるかもしれない。     
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