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そう言った男は興奮したように笑っており、「そうか! そうか! 」と何故か緑の隣に素早く移動すれば隣からバンバン背中を叩いてくる。
「え? ちょっ...何? 」
この状況を理解できない緑は疑問ばかりが浮かび上がる。
「はは。まさか、ミドリちゃんが男だったなんてなっ! 確かに男にしては可愛い顔してるもんなお前っ! 」
隣の男が緑の肩を組むとゲラゲラ笑う為に金色に近い茶色の髪が揺れ緑の頬に当たった。
その近さを不快に思いつい顔を顰めてしまう。
「って、近いんですけど ...それにあと、俺の名前ミドリじゃなくてリョクです...つか、大体ミドリって誰っすか? 」
自分の名前が間違えられているなどとは気づかない緑は昌弘由縁の新しい知らない名前についイラついてしまう。
そんな様子を肩を並べ、抱いたままの男が一瞬驚いたように見つめれば、噴き出した。
「あっ、なるほどね! リョクって読むのかアレ」
一向に先に進まない会話にイラつき始める。
「何言ってっかわかりませんけど、俺はミドリじゃなくてリョクです...あと、ついでに近いんで離れてください」
そう言うと緑は肩に伸びていた手から逃れようと離れた。
「了解、了解! ミドリって書いてリョクね」
離れたことで互いに正面で向き合えば緑は先に促す為にもう一度要件を言った。
「...あの..俺、西野.先.生を探してるんすけど」
「ああ、そうだったな。いいぜ、西野ならまだ研究室に残ってるから連れてってやるよ」
こんな軽薄そうな男に連れて行ってもらわないといけない事が嫌であったがやっとの事で出会えた昌弘の知人である。
緑はじっと男を見つめるとコクリと頷き「よろしくお願いします」と小さく呟いた。
その姿に男はニンマリ笑うと
「俺は西野の友達で梶原だ。宜しくな」
と、自己紹介をされたのでこちらもまた。
「俺は...西野先..生の生徒で浅井です。宜しくお願いします」
「おう、ちゃんと連れてってやるからなー...」
そう聞こえてきた言葉に安心していればその語尾に「リョクちゃん! 」と付け加えられ緑は更にイラついた。
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