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「いやあ、良いもの見れたなあ」
おかしくて仕方がないといった様子でにやにやする辻さんに対し、今の一部始終を見聞きされた先輩は
大きく肩を落としながら、盛大なため息をついた。
「……立ち聞きとか趣味悪」
そう吐いた顔はひどく不機嫌で。
さっきまでの甘い空気はどこへやら、一変した状況に、私は見聞きされた事への恥ずかしさも忘れて、少し残念な気持ちを抱いた。
……だって。
あんなリアクションをする先輩はなかなか見れないんだもん。
「人聞き悪いな。
ドアを開けた時に声をかけようとしたけど、二人の邪魔しちゃ悪いな、と思って気を利かせたんだよ」
そう言いながら。
辻さんが、澄ました顔で二人分のアイスカフェオレをテーブルに置く。
「……確信犯だろ」
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