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次のページもその次も、写っているのは私ばかりだった。
けれど、その写真のどれも私はレンズの方を向いていない。
当たり前だ。私はこの写真を撮られた記憶が全く無いのだ。
「これ、いつ撮ったの?」
「色々……。
大体気が付いたらシャッター切ってたから」
所在なさげに頭をかきながら高藤は言った。
「森川を見て無いと、俺は駄目なのかもしれない」
「……日南さんは?」
「お前はいつの話をしてるんだ。
とっくに別れてるよ」
アルバムをめくると、花壇の花に水を上げている写真が見えた。
良くこんなところ気が付いたなと思う。
「声位かけてくれればいいのに」
「だってあの時、お前怒ってただろ」
あの時がいつの事を言っているのかすぐに分かった。
「ゴメン。高藤の事が好きだから酷い態度をとっちゃって」
言うつもりの無かった言葉がするりと出た。
それと一緒に、涙もじわじわと溢れる。
「なんとなくで人と付き合った俺も悪いから。
それから、俺もお前の事好きだ」
いよいよ涙がこぼれた。
そっと涙を拭われて、それから。
「写真撮ってもいいか?」
「バカ……」
泣き笑い顔の私を見て、高藤はカメラを構えて双眸を下げた。
了
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