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少食でもおとこのこ
「いっぱい食べる人が好きかなあ・・・」
数合わせでかり出された合コンでお決まりの好きなタイプの話。
「え?なにそれっ!デブ線?!」
昔から恋愛体質の桃子は、すかさず私の株を下げてくる。(狙っている男性がいるようで、自分以外を悪く見せる様に必死なようだ。まあ、別に彼氏が欲しくて合コンに参加した訳ではないからいいのだけど。)
「ほら、いっぱい食べてる人見てると、こっちまで美味しくなってきて幸せになるのよね。」
適当に桃子をあしらって、目の前の唐揚げとハイボールを空にした。
空になったジョッキを机に置くと、ななめ左の人と目が合った。名前は忘れてしまったけど、たしか駅の名前にあった苗字だった気がする。適当ににっこり微笑んで、店員を呼んだ。
「ハイボールひとつと、もちもちチーズ包み揚げひとつ、お願いします。」
「ぼぼ、僕も注文、いいですか?」
駅名の彼が上擦った声で追加注文をする。
「たこわさと、石焼き明太子ビビンバと、山盛りフライドポテトと、焼きそばと、あと生ビール。ひとつずつです。はい、お願いします。」
「みんなの分、頼んでくれてありがとう。」
私は自分の分しか注文しなかったことに気付き、少し恥ずかしくなった。
駅名の彼もなぜかもじもじしている。お礼を言われて照れているのだろうか。
「いや、僕が1人で食べるんだ・・・。」
「・・・・・え?」
先程の注文の数はどう考えても1人で食べる量じゃないし、駅名の彼はどう見ても少食だ。色白で線が細い。腕なんて私のほうがきっとたくましいだろうし、何より鎖骨がびっくりするくらい浮き出ている。舐め回すように見てしまった。視線に耐えられなかったのか、駅名の彼は何かぶつくさ言いながら青白い顔で席を立ってしまった。私、相当変な目で見ていたのかもしれない。
注文した料理が来ても、彼は席に戻って来なかった。私は不安になり、彼を探しに行こうと思い席を立った。桃子の後ろを通るとき桃子に手を掴まれて後ろにつんのめった。
「ユキ、あんたさっき出て行った冴えない男と抜け出すのね?ファインプレーよ。隆司くん(恐らく先程から桃子が狙ったいる男性の名前)冴えない男と仲良いっぽくてさ、あいつがハメはずさないなら俺もはずさない、の一点張りでさあ。これで心置きなく攻撃できるわ。じゃ。」
自分の話が終わると乱暴に手を離された。桃子には敵わない。
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