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遥かな星々へと繋がった港には、故郷で成し得なかった野望の実現を夢見る野心家や、新たな惑星で人生の再出発を果たそうとする者、過去の一切から逃げるようにこの惑星に辿り着いた前科者さえも、とにかく、ありとあらゆる人間が降り立った。
それぞれの目指す未来へと向かうために。
どのような人間でも受け入れるだけの余地と勢いが、どの植民惑星にも確かに存在したし、それは現在でも変わらない。
時代とともに港は街の一部となり、街はさらに人を飲み込んで都市が築かれていった。
多くの人が行き交えば自ずとエネルギーが溢れ、混沌とした活気を生み、そうとなればと、そこで商売が営まれるのは、それはもう、脈々と続く人類社会の根源というものなのかもしれない。
両替商、金貸し、雑貨店、劇場、賭博場……そして、酒場。
僕は、港湾都市として発展したこの街の繁華街の片隅で、たいして大きくもない酒場を営んでいる。
酒場という場所には、この惑星で生まれた者も、この惑星に辿り着いた者も、得体の知れない者さえも、誰彼構わず分別なく集う。
それはまるで、港町の有り様みたいに。
そんな酒場の店主として日々を過ごすうち、僕は少し、記録してみたくなったのだ。
僕の店を訪れるなんとも興味深い客達との時間を。
僕の店を訪れる客達の、この惑星で過ごす人生のひと幕を。
名もなき人生の記録を。
などと言っても、僕も彼らも、過ごす日々はいつも通り。
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