ひじきのこころ

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ひじきのこころ

ぼくは賢い。どのくらい賢いかというと、まどの外が明るくなってちいちゃんが起きてくることを「おはよう」ということを知っているくらい賢い。 ぼくはカーテンをくわえて左側へ引っ張った。まどの外には、はしっこが見えないくらいおおきな月がこの家を照らしていた。ぼくは目を細めながらよおく月を見る。そこではウサギがもちつきをして、できたもちを冬に雪として降らすとちいちゃんが教えてくれた。今日もウサギはもちつきをしているし、今はあったかい春だからもちも降ってこない。ちいちゃんはいつもぼくにやさしくいろんなことを教えてくれた。 「ひじき」 ちいちゃんはいつもぼくのことを呼ぶ。「ひじき」の意味はわからないが、きっと素敵な意味だ。だってこんなにも、心があったかくなるんだ。 「ちいちゃん」 ぼくはお返しにちいちゃんを呼ぶ。ちいちゃんはぼくの頭を両手でわしゃわしゃとかきまぜて、にこおと笑顔を見せてくれる。ちいちゃんのこの顔が、ぼくは一番好きだ。白くて大きな歯を見せて、口のはしをにいと上にあげる。この顔が見たいから、ぼくはいつもちいちゃんを呼ぶ。ちいちゃん。ちいちゃん。     
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