便所にて

それは狂気に満ち溢れた連続ノックとしか言いようがなかった。しかしどこか間延びした声にいまいち緊迫感を感じさせない声が便所内に断続的に響きわたっる。それはまるでこだまのように私の耳に否応なく届く。

そこで私はやっと質問の内容を確実に理解と確信を得た。要は「大便か小便か」と問われているのだと。
その瞬間、恥かしさと動けないもどかしさ。そして言い知れぬ恐怖のかわりに腹から後ろの穴に向かって激しい痙攣が襲ってきた。しかしここで半尻のまま、ずっと閉じ篭ってる訳にもいかない。かといって、今の驚きで便意が戻ってきてしまった。さて、どうしたものか。
取り敢えず月並みで定番すぎる模範解答の「入ってます」と答えようと思ったが、すぐさまその答えは違うと気づく。何故なら今回は「大ですか。小ですか」という問いなのだ。なのに「入ってます」は質問に対しする返事にはなっていない。
ではどう答えるべきか。簡単だ。「大と小の両方」と答えばいいのかと気がついた。何故なら私の前も後ろも忙しかったからである。