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人の命は、実に短かった。
大地からは、常に微量の瘴気が溢れ僕たちにはどうすることもできなかった。
死を待つことしか出来なった。
それでも、いつの日か瘴気がなくなることを祈り次の世代へと命の糸を紡ぐ。
「ごほ…ごほっ…。」
「母さん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。もう、長いこと夏が続いているからね…瘴気が強くなってせいで少し苦しいだけだよ。」
“夏”
日が強く差し、雨が降らない日々。
雨は、大地を冷やして瘴気を少し抑えてくれる。けれど、夏はそれがない。
「姫さまが…舞ってくだされば良いのだけどね…。」
「…待つしか出来ないんだよね?」
「そうだね…。すまないね、少し眠るよ。」
「うん、僕は出掛けてくるからゆっくり休んでね。」
眠りについた母を確認してから、家を出た。
「姫さまか…。」
村の上に大地から離すように立った塔の上に姫さまは住んでいた。
夏が長く続けた時に、姫さまが舞を踊る事で雪を降らせる事ができ瘴気を抑えられる。何より、姫さまの雪には人の命を癒し輝かせる事が出来る。
僕のような庶民じゃあ、会えないのはわかっていたけど…それでも、塔に向けて歩き出していた。
白くて高い塔。
近くで見れば見るほど、それは高くて美しかった。
僕たちは、誰も姫さまの姿を知らない。
塔の前には、護人が扉の前に立っていた。壁を登るにも窓も何もない。
「やっぱり、無理だよなぁ…。」
諦めと絶望に負けながら、塔に背を向ける。
「どうかしたのかい、そんな暗い顔で?」
「えっ、ああ…塔前亭の女将さん。いや、塔に入りたいんだけど…。」
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