あの日の君

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今日も暑い。 外ではシャワシャワシャワと蝉の声が響いている。 まるで木そのものが鳴っているかのような大きな音だ。 その音を聞きながら、千鶴子(ちづこ)は線香を灯した仏壇に頂きもののお菓子を供えた。 夫の敏明(としあき)が亡くなって5年が経つ。 定年退職後も嘱託として勤め、その後も雇いのマンション管理人の求人を見つけて働いていた。亡くなったのは、そこを退職してすぐのことだ。 「散歩に行く」と家を出た途中で倒れ、千鶴子が病院に駆けつけた時には既に意識が無く、さよならを言う間もない別れだった。くも膜下出血との診断だった。 これからゆっくり2人で過ごせると思っていた矢先だったので、暫く茫然と過ごしていたが、ようやく最近になって気持ちの上でも落ち着いたように思える。 とは言え、今でも夕方になると「ただいまー」という声と共に玄関が開くような、そんな気がして仕方がない。
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