NDB─初めて過るその想い

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──私は、感情というものが欠落しています。 養父となったゴルグ=ラインソールが私を選んだ理由はそこだったようです。 しかし私は今、初めて心の底から深い悲しみに襲われ、涙を流していました。 篠槙羚……篠槙さんが、自らの妹である莉実さんに敗北し、『闇のゲーム』による呪いで命を落とすことが確定してしまったのです。 「篠槙さんが……『闇のゲーム』に……」 ゴルグの命でスパイをしてレジスタンスに潜り込んでいる私にとって、彼の死はむしろ喜ぶべきことのはず。 なのに私は泣いていました。 欠落していると思っていた感情が勝手に湧き出て、涙が止まらなかったのです。 ………………。 次の日、私は新たな拠点となった小さなアジトで目を覚ましました。 「あ……朝……」 レジスタンスの一員としての私は、「寝ぼすけ」であるという演技をしていましたが、その日の私はそのことが頭にはなく、朝早くから居間にあたる部屋で朝食の調理を始めていました。 「あ……おはようございます。ユリアースさん」 「……無理するな。それくらいは私がしてやる」 「大丈夫です。一杯泣いて、少しは楽になりましたから」 「……そうか」 そのことに驚いていたユリアースさんも、始めは心配してくれていましたが、私が平気な旨を伝えると深く追求はしませんでした。
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