9人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
4.教師は異端の男女と交流する
宇津木の指示で春休みに脱色した髪が、街灯に照らされて安っぽく光っている。
すっかり日の落ちた住宅街を、マコトは自転車で走る。
前カゴには使用後のタオルや宇津木の制服の上、パーカーなどを入れたビニール袋を。
そして後ろには、マコトの服を着た宇津木をのせていた。
コインランドリーにたどり着き、空いていた洗濯機に洗濯物を突っ込むと、宇津木は待ち時間の間に近くのスーパーまで買い物へ行った。
田舎のくたびれたコインランドリーにエアコンはついていない。
マコトは外のベンチに座り、煙草を吸った。隣には、顔見知りのじいさんが座っていた。
マコトの家の洗濯機は、去年の冬に壊れて、そのままになっている。
間に合わせのつもりでコインランドリーを使っているうちに、直すのも面倒になってしまった。
「なぁ、あの子。おめぇさんの女か」
「ハァ?」
「違うのか。なら、妹か」
「ちげーよ」
老人の絡みにマコトは適当に返した。
洗濯物の乾燥まで終わっても、宇津木は戻ってこなかった。
じいさんもとっくに去っている。
マコトは自転車のカゴに荷物をいれ、手で押しながらスーパーへ向かった。
緑色した看板の電飾は、生活という名の使命感を帯びてビカビカと光っている。
駐輪場には、フェンスに繋がれた犬がいた。
犬は良く言えばおとなしそうで、悪く言えばやる気がなさそうだった。
マコトが頭を撫でると、それは緩慢に瞬きをした。
毛は見た目より柔らかかった。
もしかしたら老犬なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!