第四章 士官候補試験

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準備は終わった、後は明日、皇都へと発つだけとなった。 「今日は、久しぶりに一緒に寝ましょう? というか、寝なさい! 皇都へと行ってしまったら、暫く会えなくなるから、ね?」 母さんは、かなり親バカで、10歳を迎える頃迄は一緒に寝る事を義務付けられていた。子離れしましょう、という事で、約二年間は別々に寝る事にしていた訳だ。 「いいですよ、母さん。確かに、母さんと暫く離れ離れになりそうですし、その事で母さんが情緒不安定になって、グレンさんに心配かけさせる訳にいきません。それに、一晩一緒に寝るだけで、母さんが安心するのであれば安いものです」 僕は、笑顔で答えた。 「リオ、ありがとう! 物分りが良い息子を持って、私は幸せ者だよ? 」 母さんが、感動の余り、僕を抱き締め、喜びを表現する。 「そうですね。では、明日も朝早いですから、早速、床に入りましょう?」 「そうね。そうしましょう」 僕達は早速、床に入った。 「おやすみ、リオ」 「おやすみ、母さん」 母さんは、僕を離すまいと背中に手を回し、がっちりホールドした。 とりあえず、僕が現在いる位置から皇都迄は約一週間という道程である。間には、幾つかの宿場町があるので、旅路としては問題無い所である。しかし、道中の街道は整備されているとはいえ、森や山を貫いている所もあり、当然、そこには平原より強い魔物が出現するので、注意が必要である。まあ、僕にとっては問題とする程の道のりではない。 そして、肝心の士官候補試験の中身であるが、一次試験として簡単な筆記試験と武術及び魔法の実技試験があり、武術は試験官との試合が行われ、魔法は得意な魔法を一つ見せる事となっている。 一次試験を突破すると、今度は二次試験としてサバイバル試験が行われ、山や森を舞台として、生き残りが一定数に達する迄行われる。まあ、別に命が取られるに至るような事にはならないが、不測の事態に至ったと仮定した状況下における適性を測られるという事らしい。 とりあえず、僕は明日からの旅路に備えて、睡眠を摂る事にした。 体調を充分に整える事に不足は無い。 相変わらず、母さんは安心した表情で眠っている。母さんとの約束もある。こんな所で躓いていては、先が思いやられるというものだ。そして、僕は目を閉じた。
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