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「――ごめん。怒ってない、怒ってないから……」
「……うん」
「つい興奮して……、怒鳴って悪かった……」
「……うん」
「その……手――、痛くないか?俺、かなり強く握ったから……」
「え……あ、大丈夫」
佐々木の目の前でヒラヒラッとさせて、私は何ともないよのアピール。
「よかった……」
そう呟いた佐々木の表情がなんとも言えないような切ない顔だったから、私は手を宙に浮かせたまま静止——、するとふいにギュッと握られた私の右手。
へっ?
な、何?なんで?
助けようとして私の腕をつかんでいるわけではない。今度のは違う。佐々木が私の手の平と自分の手に平を合わせて、いわゆる手を繫いでいる状態。
え?なんで?
佐々木が私の手を握っている。
私は視線を自分の手から佐々木へとあげた。
「これは……、何?」
「お前の手と俺の手」
「え……」
それはわかってるんだけど……、そんなことを聞いてるんじゃなくって……
「なんで手を繫いでいるかって?」
佐々木の方が私の気持ちを代わりに代弁してくれる。
コクコクと素早く2回頷けば、ギュッと繋いだ手に力が込められて、
「また逃げないように、予防」
「……予防」
「そう、予防」
「……」
逃げないように?それとも離さないように?
どっち?
もうっ、勘違いしそうになる。
それをどういう意味でとったらいいのか……、
あ、でも待って、私に追いついてきてくれたってことは、私の事、少しは好き?ちょっと図々しいか……、
でも、ほんのちょびっとくらいなら……気にかけてくれたかな?
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