再び

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全ての界でまともな機能が取り戻せ、平和がまた訪れると、暇で暇で仕方がない。 毎日鏡の前でうろうろとしていると、大臣からはお辞めくださいませと悲鳴が上がり、やっと設けた一人息子の泰我(たいが)も16という初めて奏太に会った時と同じ年になり、子育てをユーリがしたからかかなりしっかりとした王子に成長している。 「母上、行かれたいのでしょう?」 「い、いや?」 「僕のことは大丈夫です。陛下としての役割は母上にしかできませんが、王子として国のことは父上からちゃんと学んでおります。安心して行ってきてください」 「だが、ユーリが許さんだろう?」 「もう準備は出来てますし、あちらの父にも連絡はしてあります。それに、ルーカス様も待ちわびてますよ?」 「そ、そうか?」 「全く、待っていたのでしょう?この子が跡を継げるようになるまで」 「幻界は女王の世界というのを終わらせるのに苦労したんだからな?私に女ができていればまた話は別だったかもしれんが。泰我、よく聞け。材料の手配は教えたとおりにしろ。魔界と天界との連絡もこまめに。ルーカスの息子とも歳が近いから何度もあってるだろう?飲んだくれじじいとも。何かあれば頼れ。私も何時でも戻ってくる。分かったか?」 「分かってます。ムーももう鏡の前で待ってますよ?」 行ってくると手を振りつつ、出かける前にきつく抱きしめ、「そのうち遊びに来い」と耳打ちする。 「陛下の気は置いてありますか?」 「100年分は置いてある」 そして一歩前に踏み出し、鏡のゲートを通り過ぎ、人間界の我が家へと降り立つ。
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