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雪が部屋に帰ってきたのは、数時間後だった。
鼻歌交じりに上機嫌な様子の雪が扉を開けた瞬間、大吾は勢いよく飛び出してきた。
ドタドタドタとトイレへと駆け込む大吾の後ろ姿を見送って、雪は買ってきたものをベッドの上に並べ始める。
赤い首輪に、枷のついた四本のチェーン、錠剤など何に使うのか想像に難くないものばかりであった。
チェーンをベッドの四隅に取り付け、錠剤や首輪をローテーブルに置いたところで、雪は大吾の様子を見にトイレへと向かった。
「大吾くん、大丈夫?」
「誰のせいだと思ってんだよ」
大吾の怒った顔が雪の脳裏に浮かび、くすりと笑いが漏れた。
「何笑ってんだよ」
トイレから出てきた大吾が雪を睨みつけるも、手錠がかけられているせいか、どこか迫力に欠ける。
雪は、自分よりも数センチばかり背の高い大吾の黒髪をくしゃくしゃと撫ぜた。
それから、かかとを上げて下からすくい上げるようなキスをする。
数時間、飲み食いをしていない大吾の唇はカサカサと乾いていた。
先ほど同様、固まる大吾。
大吾はキスが弱いんだ、と嬉しく思う雪であった。
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